日本人の中国入国には短期間の観光であってもビザが必要になったため,東京有明にある中国ビザセンターで観光ビザを申請してきました. 時期によって刻々と状況が変わっているようですが,2024 年 4 月に自分が体験した内容を共有します.
全体的な感想としては,手続きは非常によくシステム化されており,現地の待ち時間もほぼないため,非常に楽に申請することができました. ビザが必要になったことで中国旅行を諦めているという話もよく聞きますが,ハードルは想像以上に低いと感じました. 米国の ESTA 等と比べても「ビザセンターに直接赴かなければならない」「ビザの費用が高い」という二点以外はほぼ変わらない印象です.
- ビザセンターでは待ち時間も少なく,30 分程度で終わりました.日本の役所と比べても非常にスムーズでした
- 凄い勢いで捌いてはいるものの,雑というわけではなく淡々と処理していて,総じて丁寧な印象です
- 現地に証明写真撮影機やコピー機もあり書類の不備があっても返されるわけではなさそうですが,結構行列していて待っているようだったので,書類は不備がないようにした方が楽です
- 火曜日に申請して金曜には受け取りと,ウェブサイトに記載通りの所要日数で完了しました
概観
旅行の準備の流れ
どのビザでも共通した事とは思いますが,ビザの申請にはホテルの予約や出国までの航空券が必要です. そのため,ビザの申請だけでなく旅行の準備自体にも順番があるため,その部分も含めた全体の流れを簡単に示しておきます.
- 有効期限内のパスポートの用意
- 当然ですがパスポートを更新するとビザは無効です
- また,航空券の予約も当然ながらパスポートが必要です
- 入国から出国までの航空券と,全日程のホテルの予約
- ビザ申請後に変更してもかまいません.ビザの有効期間内なら日程が変わっても大丈夫です
- (夜行列車を使う予定の場合はどうなるんでしょうか……突っ込まれると面倒ですし,列車が取れなかったときのために一旦ホテルを仮押さえしておいた方がいいかもしれません)
- 証明写真の用意(紙およびデータ)
- Web での書類作成の一番最初に写真のアップロードがあります
- 書類の用意
- 両親子供の誕生日や会社員の場合は上司の名前や連絡先が必要
- 書く内容が多く,人によってはすぐにわからない可能性もあるため,申請直前ぎりぎり準備するのはおすすめしません
- ビザセンター(もしくは領事館)で申請しパスポートを預ける
- 指定された期日以降にパスポートを受け取り
私の旅行の概要
私がどのような旅行で申請したのかも重要な情報かと思いますので,軽く概要を記しておきます
- 単身での観光旅行です
- 中国に 4 泊 5 日滞在し,2 都市を回ります
- 羽田から上海経由で重慶に行き 2 泊,その後深圳へ移動し 2 泊,帰りは深圳から関空への直行便で帰国します
- 次のような懸念事項がありましたが,問題なく申請できました.
- 航空券は深圳から関空へ一旦帰国したあとも,そのままソウル・台北・羽田・沖縄へと続く
- 重慶と深圳の間は鉄道で移動する予定で,予約開始前なので乗車券はまだ用意していない
必要な書類について
こういった公的な申請はどこもそうだと思いますが,多分に漏れず書類は非常に厳しく見られます. 内容がどうというより,必要な記載事項が書かれているかどうかは重要です.
特に,ビザセンターでは書類不備がある人のためのコピー機や証明書撮影機に長い列が出来ていたので,ここでしっかり不備がないように準備しておくことが大切なように感じます.
航空券
入国と出国両方の航空券をあらかじめ予約し,その e チケット控えを印刷して持って行きました.
先に述べたように私は「東京から中国国内上海で乗り継いで重慶,帰りは深圳から帰国,そしてそのあともソウル・台北・羽田・沖縄の旅行が一続きになった長い航空券」を予約しています. 現地で聞かれたことは以下の二つだけでした
- (KIX 関空の部分を指さして)このあとはどう行きますか?
- ソウル,台北に行き,東京羽田に戻って沖縄に行くことを伝えました
- (CHONGQING の部分を指さして)これはなんですか?
- “Chóngqìng (重慶)” であることを伝えました
ホテルの予約メール
ここは現地での確認に一番時間がかかったところです.
すべてのホテルの予約について,必要な事項を確認していくのですが,ホテルからのメールはこれが各所に散らばっているため,探すのに手間取ります. 最初は係の人が探して目印を付けていくのですが,当然すぐには見つからないので「どこにありますか?」と聞かれます. あらかじめ必要な内容が記載されているか,どこに印刷されているかを確認しておくと,窓口で慌てずによいと思います.
確認された内容
確認された内容は
- ホテルの名前
- ホテルの住所
- ホテルの電話番号
- 予約者の名前
でした.
ここでの確認事項は,ビザセンターのウェブサイトには記載が特になく,
航空券やホテル予約表などの日程に関する書類、あるいは中国国内の関係機関、関係者が発行する旅行招待状。招待状には以下の内容を含むこと。
のような記載しかなかったため,ちょっとわかりづらい点かと思います.
また,スタッフに聞かれた内容として,旅程を通してすべて同じホテルに滞在するのかどうかの確認を受けました.このとき「ホテルは同じですか?」としか言われず,先に重慶と深圳両方に行く航空券を確認していましたし,2 ヶ所分のホテルの予約を確認しているところだったため,ちょっと質問で何を聞いているのか理解するのに時間がかりました…….
証明写真
これは結構厳しいらしいという噂を聞くため,私はメガネを外し,しっかり髪をピンで留め耳と額が出るようにして撮影しました. ここまでする必要はないかと思いますが,サイズ等要件が具体的に数値で指定されていたため,私は几帳面にデジタルデータにしてサイズを測定しました.
その結果問題なく申請できましたが,現地で撮り直せるため,正直ここまで几帳面にしなくても良かったかなと思っています.
この写真は Web と紙で提出する書類にのみ使われ,免許証やパスポートの写真のように一般の人が目にするものではないので,受理されるよう条件さえ満たしていれば別に写りを気にする必要はありません.
背景色
具体的な要件は公式のウェブサイトに上がっているので参照していただきたいのですが,海外の政府機関に提出する書類ですから,他国の標準で申請する必要があります. そのため,適当な証明書撮影機でぱっと済ませるのが案外難しいです.特に背景色とサイズの条件で苦労しました.
証明書撮影機は基本的に適当な背景色が付いてしまうため,背景色の変更が可能な機種を探して,対応しているコースにする必要があります. また,機械によってはそもそも背景色の色付けに対応していないため,適合する写真を印刷できないばあいもあります.
私が使った証明書撮影機は機種がだいぶ古かったようで選択ができず,背景は機器の後ろの壁がそのまま撮影され,大昔に撮った証明写真を彷彿とさせるような,縦に影のムラのある割と暗めのグレーで印刷されてしまいました. 選択画面があるかなと思っている間にそのまま印刷されてしまい無駄になってしまったので,撮影前にしっかりと調べておくとよいです. よく見かける機種で都心の人が多い場所だからと油断していたのですが,綺麗な見た目をして普通に古い非対応機種が置いてあるんですね…….
結局 PC で背景色を白で塗りつぶして印刷しました.
電子申請
また,紙の実物の証明写真の他に,Web 上での書類作成のためのデータ(これは最終的に申請用紙に印刷されます)が必要です. これは大きくとも縦が 560 画素だけとか,ファイルサイズの上限のみならず下限まであるのはちょっと制限が厳しいように感じました.
Web 上での申請用紙作成
ビザの申請用紙は Web サイト上で記入し,最後にダウンロードできる PDF を印刷して持っていきます.
記入事項には両親や子の生年月日や,上司の名前や連絡先も記載する必要があります.ここがはっきりしない場合や確認がいる場合には時間がかかることもあるかと思うので,さすがに行こうと思っている当日の朝に用意するのはやめた方がいいと思います. 私は親の生まれ年が曖昧になり当日朝聞いたため,親からの返事を待って印刷し自宅を出発という状態になりました.
公式ウェブサイト
「査証高速リンク」という一見ここから申請するとわからないようなリンクから申し込みをします.
中をいろいろ見ていくと,所々クリックできない予約リンクが文字だけ残っていたり,郵送での手続きの話が書かれているなど昔の名残がありますが,現在 (2024 年 4 月) はそのようなものは一切ないため,これらは見なかったことにします.
記載事項
記載事項は大量にあるのですが,その中でも自分が気になった所をピックアップします.
有効期限と滞在日数
とりあえず有効期限は最長 3 ヶ月なので 3 ヶ月で出しました. 滞在日数は,一応 5 日しか滞在しない予定ですが,一次ビザ(一回のみの訪問)では最長 30 日まで出るようなので 30 日にして提出しました.
短くしても良いのですが,まあダメなら短い日数で出してくれると思いますし,現地でコロナ感染等トラブルに遭ったときに気楽だとおもったので最長の期間で申請しました.
最終学歴
学歴を記載します.
以前は高等教育をすべて書いていたらしいですね.その名残か,「最終学歴」とあるのに「学歴を追加する」のボタンがあります.
私は最後に修了した高等教育である大学院のみ記載しました.
勤務先
記載事項には上司の連絡先として電話番号を記載する必要がありますが,私は会社の電話番号と同じものを書きました.
携帯電話を記載した友人も,なにか特に連絡等もなにもなかったようです.
滞在情報
「どの都市のどの住所に,いつからいつまで滞在するのか」を記載します.
Web 上の入力欄ではなぜか「入国日」「出国日」になっていますが,これは出入国ではなく「その街に滞在する期間」を書く情報です.印刷された紙には「到达日期/Date of arrival」「离开日期/Date of departure」となっているため,おそらく翻訳ミスと思われます.
過去の訪問歴
中国(内地)の訪問歴の有無と,その他の国の訪問歴を書きます.
中国の訪問歴の有無は,香港・マカオ・台湾の地域については入国管理も独立して行われていますし,No でよさそうです. 過去に詳しく訪問地を選択することがあった時期も,ここの記載は内地だけだったようです.また,私のパスポートにはたくさん台湾のスタンプが押されていますが,No の記載でも何も言われず問題なく通りました.
また,中国以外の国の訪問歴も記載する部分があります.ここは選択肢から選択するのですが,中国政府的には香港・マカオ・台湾は中国なので当然選択肢にはなく,記載しません.
港澳台の訪問歴について書く場所がどこにもない気がするのですが……
ビザセンターでの手続きの様子
さて,私は東京の有明にあるビザセンターで手続きをしました.
もともと予約制(にも関わらず数時間待たされたらしい)のが,2023年11月20日より廃止 されたため,好きなタイミングで行くことができます.
もとよりこのビザセンター,混雑が激しく待たされる上,態度の悪いスタッフもいるとなかなか評判が悪いところでした. しかし,私が行ったときはそのようなことはまったくなく,聞いていた評判の正反対で待ち時間もなく丁寧な応対を受けることができました.
申請
私が訪問したのは 2024 年 4 月 9 日火曜日の朝,開室の直前に到着しました.
入室と受付
まず部屋の入口にいる警備員さんに申請書を見せると列に案内され,まずカウンターで資料のチェックを受けます. カウンターから溢れそうなほど所狭しと並んだ大勢のスタッフが,まるで締め切り直前に慌てて取り組んでいるかのような怒濤の勢いで資料を捌いていました. ここで一通りの資料を確認し,必要事項の記載箇所に鉛筆で印をつけ,確認しやすいようにしていました.
前述のように,航空券やホテルの予約について色々と確認されたのはこの段階でした.
一通り確認が終わるとようやく呼び出し番号が書かれたレシートを受け取り,窓口に呼ばれるのを待ちます.
窓口
窓口に呼ばれたら,一応ここで面談となります.
商用ビザの人がいろいろと話を聞かれている声が聞こえてきます. 窓口の人が一通り資料を確認しながら PC に入力するのを待ち,軽く職業を聞かれたあと,いくつか署名をし,写真を撮って終わりでした.
終わったら,受け取り日時や料金が書かれた紙を受け取って終わりです.
指紋は採られませんでした.観光ビザの場合,2024 年 12 月 31 日まで免除されているようです.→中国査証申請についてのお知らせ - 中華人民共和国駐日本国大使館
待ち時間
待ち時間はほぼなく,どちらかというと窓口等で手続きしている時間の方が長かったです. 20 人以上は開室前から待っていたと思いますが,あっという間に捌いていました.
ただし,証明写真機やコピー機・印刷機は長蛇の列となっていたため,書類に不備があった場合は待ち時間が大きく伸びそうです.
たくさんあるビザの申請・受け取り両方の窓口の呼び出しが 1 つのディスプレイにまぜこぜで表示されることもあり,相当ひっきりなしに立て続けに呼び出しのベルが鳴っていて,待ち時間自体は短いもののあまり落ち着いて待てる状況ではありませんでした.
タイムラインとしては以下のような感じでした.
- 8:50 到着
- 9:00 入室
- 9:10 資料確認終了,窓口で呼ばれるのを待機
- 9:30 一通り手続き終了
受け取り
2024 年 4 月 12 日から受け取り可とのことだったため,早速この日に受け取りに行きました.
警備員さんに引換証を見せると呼び出し番号が書かれたレシートが渡されるので,受け取り専用の別室に行って待ちます.
呼び出されたら,あとは手数料を払ったら終わりです. クレジットカードも一通りの決済が使えます.
「はい,ビザでーす」と言いながらとてもフレンドリーに渡していただき,ビザを確認したら無事,受け取りです!
- 9:55 到着
- 10:10 受け取り完了
さいごに
今回ビザセンターにいくとなったとき,周りの中国人からは「中国の窓口は日本と違って対応が雑だから覚悟をしていった方がいいぞ」「中国人は昼寝をしっかり取るが,昼休憩から戻って来たと思ったらすぐに受付時間を終えてしまうこともあるからな~」と散々言われ,過去にビザセンターで申告した人の記載を見ても「予約していったのに数時間待たされた」ような話が目に付き,これは苦労しそうだと相当身構えての申告でした.
実際に行ってみるとまったくそんなことはなく,拍子抜けするほどさくさくと手続きが進みましたし,同時期に申請した知人も一様にスムーズに手続きができたようでした.
「ビザを取りにいくのが大変と聞くから」と中国旅行に行かない話を聞きますが,少なくともビザの部分においてはハードルはほぼないと言えるでしょう.
とはいえ,中国旅行はまだこれからです. 実際に中国に訪れた話は帰国後に記事を書こうと思います.